はじめに

 IPS(インテンショナル・ピアサポート)をはじめての人に紹介するとき、私は前ページのように会話を切り出すでしょう。IPSでは、それぞれが抱えている問題や悩み事を中心にした会話ではなく、新たな可能性に目を向けた、お互いにとっての学びを生み出すような会話を意図していることを伝えたいからです。そのような視点の転換が、人との関係のあり方にどれほど大きな違いを生み出すのかをIPSの実践を通して目にすることができます。 IPSは精神科領域のピアサポートのあり方を求めて形作られてきたものですが、大切な人との関係における、どのような場面の会話にも活かすことができます。私たちが求めてきたピアサポートのあり方は、究極的に、人と人との関係のあり方だからです。このパンフレットでは、IPSのすべてを詳しくお伝えすることはできないのですが、IPSの骨格となる以下の事柄についてお話します。

IPSの視座

  • 問題解決から、学びを生み出すコミュニケーションへの転換

IPSの会話をするために大切な事柄

  • つながりの感覚
  • 世界観 – 物事の捉え方(どうしてそう思うようになったのか)に意識を向けること
  • 相互性 – お互い責任を持ち、学び成長する関わりの仕方

 また最後に、『成長と変化の機会としての危機(クライシス)』と題した文章が載せてあります。私(シェリー・ミード)がIPSを考え始めたきっかけは、精神医療における“危機(クライシス)”の扱い方に納得できず、それとは違った対応の仕方を求めたことでした。日常のどのような人間関係にもIPSが活かされることを期待する一方、危機(クライシス)状況でこそ、IPSが実践されることを強く願っています。

 

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