パーソナル・ストーリー 8/8

…7 からの続きです

 医療関係者は誰も、この話を信じません。私たちは間違っているに違いない。“本当に精神病的”な人とだったら、そんな結果が得られるはずがないと言われます。

 私たちは医療関係者の言うことを無視し、続けます。自分たちが一緒にやっていることの力を知っています。自分の人生において、それを目の当たりにし、経験しています。

 つぎつぎと困難に立ち向かいます。困難な経験を解決の手立てに転換します。何が役に立ち、何が役に立たないかについて、いつわりのない対話を重ねます。

 私たちは、新しいグループをはじめ、新しいやり方を試し、古いストーリーを再検証し、新しいストーリーを試してみます。トラウマの経験を持つメンバーは、話し合い療法は役に立たないと言います。そこに参加すると、行く前より帰るときのほうが気分が悪くなっている。しかも、そのためにお金を払ってまでして。問題は、ひどいストーリーを詳しく話すように強制されることだと、そのメンバーたちは考えています。“虐待の経験に対処する”治療目的という名のもとに、サバイバーが次から次に、虐待の経験を詳しく語るのです。

 それで、私たちは新しいグループを始めます。音楽が関係しています。音楽をコミュニケーションの手段として使うのです。そして、ひどい体験談を語るかわりに、音楽を通して、自分たちの声を発見し、それをお互いに重ね合わせることで、自分たちが作り出すもののエネルギーとパワーを感じます。

 従来、疎外され、声を奪われ、閉じ込められてきた人たちの文化に、これほどの変化をもたらしているのは、一体、何なのでしょうか?これは極めて単純なことだと、私は気づきます。私たちは、違ったやり方で、交流しているのです。問題や欠陥で自分たちを定義して、その定義のなかで、会話をしたり、お互いについての話しをするのではなく、自分たちの力と可能性を通してコミュニケーションをしているのです。

 新たな前提と信念をもってやり続け、私たちは、自分にとっての新しい現実をつくりだします。私たちはコミュニティを創ります。私たちは、自分たちの身におきた秘密にチャレンジします。語り、発見し、新しい行動に導く会話を通して、変化をもたらします。

 これは、宇宙にロケットを飛ばすような複雑なことではありません。ですが、私たちが思い込まされてきたことと違っていることは確かです。私たちは、古い思い込みにチャレンジすることで、新しい結果を導き出すようになってきています。これは幸運なことに、私たちの努力の過程であると同時に成果なのです。