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本研究の背景

近年の精神保健医療分野では、患者や利用者、 当事者を中心に考えたサービスのあり方が模索されていますが、 そのようなサービスを実現するための具体的な方法や指針、基本的な理念の共有は課題として残されたままです。 それらの要請に応えるためのアプローチとして、私たちはピアサポートに注目しました。 精神保健の領域はピアサポートが活発に実践されている領域の一つです。 一般的なピアサポートと同様の支援の他に、ロールモデルの提供や援助専門職によるサービスの質の向上、 当事者スタッフ自身のリカバリーの促進といった精神保健領域特有の当事者スタッフの貢献が報告されています。 さらに、スティグマの軽減や当事者中心のケア(Person Centered Care)の推進といった効果をもたらす可能性も指摘されています。

このような流れの中に、Meadの開発したIPS(Intentional Peer Support)があります。 (Mead S.「IPSワークブック」参照。Shery Mead Consulting のサイト よりお求めいだけます)。IPSとは、単に同じ経験を有する者であるということだけでなく、 相互に責任を有し敬意を払うという基本姿勢や、サービス利用者や援助職者の一方的な支援の関係ではなく相互に学び合う関係を、 意図的に(Intentional)実践していくものです。ピアサポートの技法を「同じ人間としてのピア」としてサービス利用者や援助職者がともに学ぶことで、 互いの理解へとつながり、より良い関係性を築くための理念的な礎となることが期待されます。このIPSは、米国をはじめ、 英国、豪国、ニュージーランド、ザンビアなどの国々で研修プログラムが実施されており、日本においても、Meadを招いて実施された研修プログラムが過去に二度実施されています。

本研究の目的

本研究の目的は、IPS研修を受けることによって生じる変化、IPSを知ることによって生じる変化がどのようなものであるのかを考えることです。

また、IPS研修受講者へのインタビュー調査を行い、その質的分析を通して、IPSの概念を知ることで生じた変化を明らかにする一方で、 精神保健医療サービスの援助者-利用者関係のあり方を抽出し、利用者中心のサービスを実現するための具体的な方法や、 基本的な理念を考えたいと思います。そして、援助者-被援助者の関係を、対等な人間としての関係へと、概念の再考を促すことを目標とします。


IPS (Intentional Peer Support)
「意図的なピアサポート」を考える取り組み